デザイナーが一番表に見せてはいけない感情、
それは「自分が手間暇をかけて作り上げたから・・・」
という感情だと思っています。
「これは作るのに何時間かかった」
「これを完成させるのに徹夜した」
「これを作るのにこれだけ苦労した」
など、
悪い意味で自分の制作したものを
「作品として愛着を持つ」ことです。
画家の方、アーティストの方ならその苦労した感情を表に出してもいいかもしれません。
ですが私のように商業用デザインを制作する立場の人間は、完成前にどれだけ辛い思いをしたとしても、それはお客様にとって1mmも関係ありません。
自分の作ったデザインに愛着を持つ前に、
常に第三者目線でいることが大切だと感じています。
もちろん「反応が上がりました、売上が上がりました」という声をいただくと、この仕事に携わって良かったと心の底から感じますし、自信なく制作をしているわけではありません。
作っている最中には、本当に深い愛を込めて作っています(これは本当です)
ですが良い意味でも悪い意味でも、私には自分の制作したデザインに対し、
出来上がった瞬間は
「おっしゃー!出来た!!今回もええやんかー!愛してるよー!」
と高揚ましまし、愛しか感じませんが、後から仕上がりのサンプルをもらったり店頭で並んでいるのを見かけると、「実際のお客様から見るとどう見えてんのかね?」と検討や反省材料の一部と化している場合がほとんどです。
人には「自分の作ったものに愛着を持つ」という気持ちがあり、これは「イケア効果」と呼ばれています。
「イケア効果(IKEA effect)」
2011年にハーバードビジネススクールのマイケル・I・ノートン教授、テュレーン大学准教授のダニエル・モション氏(当時はイェール大学の博士研究員)、デューク大学のダン・アリエリー教授によって特定され、命名。
イケアは、日本でもお馴染みのスウェーデンの家具量販店「IKEA」のこと。
「イケア効果」とは、
・プロが組んだ既製の家具
・自分が組み立てた家具
どちらに高い値段をつけるか?という実験で自分が組み立てた家具により高額値をつける人の方が多いという結果に基づいた言葉です。
例え不十分な仕上がりでも、
「自分自身が手間暇をかけて作ったものが良い」と過大評価をする傾向にある、ということを表しています。
アメリカでは1950年に、全ての材料が入っているホットケーキミックスが発売された時、品質には問題無いにも関わらず全く売れなかったそう。
そこで製品のレシピを変更し、購入したお客様には自分で卵を入れてもらう製品に変更したところ「手作り感」を感じる製品に早変わり、売上が伸びた。という話があります。
日本でもDIYが流行しましたし、スーパーの食品売り場に行けばインスタント食品でも、一手間を加えて「手作り感」を出せるレシピがパッケージの裏面に掲載されていたり「自分で作ることで生まれる愛」に気づかせるような仕掛けがたくさんあります。
ですが、デザインを作る側は決して
「自分の作ったものにうっとり」していてはいけません。
「ここまで作ったのに」と思っても途中のテスト段階で反応が悪ければ、それを見直し時には全部壊すことも必要です。
そして何時間かかって作ろうと徹夜しようと、データの作り方が大変だろうと、そこにフォーカスした愛着を持つべきじゃないと思っています。
そのデザインは誰のためにある?
を常にクライアントと共有することが、歪んだ愛着を持つ前に必要だと本当に感じています。
ちなみに私はDIYが苦手ですし、自分で組み立てたイケアの家具にもあまり愛着を持てないタイプなのですが・・・ |ω`)
せめて仕事以外の日常生活では自分で作ったものに愛着を持てる何かを作ろうと思います。
それでは今日はこのへんで。
参考記事はコチラ↓
https://studyhacker.net/ikea-effect
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