先日、いつもと同じように仕事をしていると、現在制作中で来週には校了して印刷しないとまずい、某ギフトカタログに使う生肉の写真がメールで送られてきました。
商品になる生肉は、
サーロインステーキとしゃぶしゃぶ用の薄切り肉。
国産で赤身と旨味たっぷりの贅沢な逸品です。
カタログ制作当初は予定になかったのですが、大人の都合なのか急遽販売が決まり、現物撮影スケジュールを組むことができず、お客様がいつも依頼しているカメラマンさんがメニューの撮影の合間にこの生肉を撮影してくれることとなり、「こういう感じで撮影してくれ」と今回私はリクエストを送るのみに。
その箇所のデザインを空けて私は写真が届くのを、若干嫌な予感を抱きながら待っておりました。
「生肉の撮影ってめちゃくちゃ難しいんだけど、あのメニューを撮っている人にできるかな・・・(←以前にちょっとだけ会ったことある)いや、できると信じよう!信じることから仕事は生まれるんやで〜。」と思いながら。
そして、先日
その生肉の写真が届いたのですが、
やはり嫌な予感は的中。
写真を見ると、
青みがかって、全体的にしんなりした生肉が写っておりました。
許されるのであれば(許されないけれどな)ここに写真を載せて晒したい。肉が青いって・・・。
(写真を載せることができないので)もう少し文章で説明しますが、生肉にはどうしても血が含まれますので少し紫がかったという表現が一番しっくりくるかもしれません。
いずれにせよちょっと致命的です。
おそらくライティングもしっかり行わず、室内光でそのまま撮って、しかもレタッチもしていません。
事実として「いや、実物が紫がかってんだよ」と言われても、
お客様に見せる写真は↓このように赤くてピシっとした状態で美しく魅せる必要があります。
ちなみに↑このように魅せるためには、撮影前後の作業が欠かせません。
非常に繊細なので撮影が難しく、撮影前はできればフードスタイリストをつけることがベストです。
サーロインステーキなど少し厚みのある生肉の時は、肉と肉の間にティッシュや緩衝材などを挟み、ボリュームを少し出して、重厚感のある美しいお皿に綺麗に盛り付け、ハーブや野菜などの飾りを添えます。
しゃぶしゃぶ用などの薄切り肉の場合はもっと大変で、
1枚づつのお肉が薄いため、1枚1枚丁寧に分解した後に、形をキープするためのフィルムを肉の裏にセットして、その後バランス良くお皿に並べます。
しかも、解凍したての時は肉がまだ凍っていて固いので、少し指で剥がせるくらいまでに溶けるタイミングを見計らって猛スピードで上記の盛り付けを終わらせます。
でないと肉がだんだん室温で溶けてきて、しんなりとしていしまい写真映えしなくなってしまうんですね。
そんな裏で猛スピードでスタイリングを済ませた後に、ライティングをしっかり考えてくださるカメラマンさんの腕によって、このように・・・、
(↓こちらは見せても良い例)
「美味しそう〜!」な肉の写真ができあがるわけです。
しかも、生肉は繊細なのでレタッチは必須。
ライティングだけではどうしても青みがかってしまいがちで、印刷の仕上がりを見るとどうにもこうにも美味しくなさそうなので、後から赤みをプラスすることは必ず必要です。
私も簡単なレタッチならこれまでも対応してきました。
例えば、海外のモデルさんにはどうしても入りがちなタトゥーも、日本の広告では出すわけにもいかないので消したり、ブラジャーの広告に使うモデルさんのウエストを削って細くしたり(お胸の大きさとお顔で選ぶので、ちょっとお腹が出ている人も多し)、シミ・シワ・ほくろ・毛穴の除去は当たり前。
下着の仕事をしている時は、女性のお胸の谷間を増やしたり、ちょっとここで書くのもアレですが、男性の大切な部分のボリュームも良く調整していました(海外のモデルさんはどうしてもボリュミーな方が多いので。しかしなさすぎても不自然なのでこの補正は大変でした)
商業広告に使う写真が、
撮り下ろしなんて、
まずありません。
世の皆様に美しく見ていただくために、撮影の前後にクリエイターは加工を施していますし、これは商業媒体に携わるクリエイターには必要な加工技術です。
(余談ですが雑誌の写真なんてほとんど全ページ100%加工済みです)
なのに、撮り下ろした生肉をそのまま確認もせずにドーンと送ってくるなんて・・・。
え〜ん(T_T)半泣きです。
もうこういう写真を見るたびに私は強く思う。
Macを触れるだけのデザイナーに、
自分は決してならぬと。
そして同じように、
シャッターを切れるから、道具を揃えているからカメラマンではないし、シャッターを切ることが広告写真を撮ることでもありません。
そしてもう一つは、
お客様の断言することをあまり過信しすぎないこと。
事前にクオリティのリクエストを伝えてることはもちろんですが、もし「これはおかしいでしょ」と思ったものが材料として届いた時に「これはちょっとまずいっす」と思える判断基準を身につけることも大事です。
もし青みがかった肉をそのまま何も不思議に思わず印刷に出して納品してしまったら、その生肉をそのまま何の疑問も持たずにGOしてしまったデザイナーのセンスも結局疑われてしまう結果になると言っても過言ではありません。
撮影に来てくださるカメラマンさんはご年配の方も多く、その中には「先生」扱いされてきた方も多くいらっしゃいます。
制作担当のデザイナーがいろいろ注文をつけるのを嫌がるカメラマンさんもいますが、どんな方ともきっちりいい仕事ができるように上手くリクエストを伝えられるようなコミュニケーション術を身につけよう!と前向きに今回の「青みがかった生肉」の写真を見てそう感じた今週。
この仕事が終わったら、ツヤツヤで赤い美味しいお肉を食べにいきたいと思っています。
それでは今日はこのへんで
\お読みいただきありがとうございます/
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