「丁寧な食事の作法」でド真剣にご飯をいただいてみた話

今日は、いつも月に一度日本橋のお茶室で行われている“ビジネス茶道”の特別編。

毎月の“ビジネス茶道”では先生がたててくださるお抹茶とお菓子をいただきながら掛け軸や器などに触れて静寂な時間を過ごしますが、今日はその前に“お食事”をいただく回。

日本文化の知恵を蓄えるだけに留まらず、懐石をいただきながら“日本の美”に実際に触れ一体になるという、まさに特別なバージョンです。

(↓昨年の「特別編」の感想はコチラをどうぞ)

「ビジネス茶道(特別編)懐石秘密箱」に参加してきた話

昨年もこの特別編に参加させていただき
「食事」という行為の凄さに衝撃を受けたのですが、
今年も凄かった………。

今年の特別編の食事テーマは、
「丁寧な食事の作法」。
だったのですが………。

日本人なら、
いや日本人ではなくとも、

“人”としてこの世に生を受けているのであれば、
この「丁寧な食事の作法」は
性別・年齢関係なく
全員体験必須!
感じて帰ってきました。

一度体験すると、明日から食事に対しての考えが変わる!!
と申し上げて決して過言ではありません。

今日は、
①「丁寧な食事の作法」、「命をいただく」ことについての講義を聞いたあと→②そのお作法に則り実際にお食事→③そして最後にお菓子とお抹茶をいただくという流れ。

文章だけでどこまで伝わるかわかりませんが(伝えるのほんとに難しい)、この体験談を私なりに感じた感想も交えながらお届けしていきます。

「丁寧な食事の作法」とはなんぞや?

「丁寧な食事の作法」についての講義をいただいたのは、昨年に引き続き今年も富山県からお越しいただいた「懐石万惣」店主・中尾英力先生(すごい、ほんとにすごい先生です)。

まず「丁寧な食事の作法」について事前に先生が告知してくださった文章を拝借して、ここに記しておきたいと思います。

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「丁寧な食事の作法」とは
“禅”の食事作法を茶道の懐石に取り入れたもの。

過去を見ても懐石の世界に“禅僧”の食事作法を深く取り入れたいと思う方が沢山いたと考えられますが、茶道の約500年の歴史の中でしっかりと文書化し完成させたと言える方はたったの二人のみです。

最初の方は
酒井宗雅(1756~1790)で姫路城主でもあり酒井抱一のお兄さん。
この宗雅が「草庵行鉢式」という名で行っていました。

二人目の方は
幕末の大老・井伊直弼。
「真懐石」と名付け茶道の最終段階の学びに位置付けていました。

井伊直弼亡き後、約150年まったく行われた跡が無く研究者の中でも復活は困難で幻の懐石のように扱われていましたが、去年復活に成功し「丁寧な食事の作法」という名で全国に広める活動が行われています。

食事とは命の交換の儀式でもあり尊い営み。

また「丁寧な食事の作法」は、尊い命を頂くためだけの作法ではなく、意識を宇宙と同一化し神秘性ではなく真理を気づかせてくれます。

過去二人の著名な茶人たちの時代は広める術がなく忘れ去られたこの食事作法。
インターネットを通じ広める環境が整い、
特に廃棄食料が多い現代に、この「命を頂く作法」を紹介したいと思います。

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以上が
この「丁寧な食事の作法」の概要。

現在で忘れ去られた「食事」の概念だと感じます。

毎回の食事が「人生最後の食事」。

そして実際にかつての「禅僧」がおこなっていたその作法に則り「丁寧に食事」をいただくのですが、食事の前後に合唱をして↓この資料に書かれている挨拶をします。

↑↑↑現代人に理解しやすいように現代使用している言葉で書かれていますが、

本来はこのように↓

↑お経。

本来は食事の際にこのお経を毎回読み上げます。
毎度の食事ですよ。
1日の最初に摂る食事だけじゃなくて毎回。

というのも、
明日生きている保証なんてどこにもないわけですし、今日帰る時に命を落とすかもしれない(まだ死にたくないけど)し、この食事会場に爆弾が落ちるかもしれない(それも嫌だけど)

なので
毎度の食事を
人生最後の食事
としていただくべき、

だから毎回このように感謝をするし、
その時間を大切にする。

などそういう意味を込めてこのお経が読みます。

また食事をいただくことで「悟りを開かせていただく」ということもこのお経は意味しているんですね。

実際に「丁寧に食事」をしてみた

そして、いよいよ食事をいただくのですが、

「命をいただく」わけですので、こちらも真剣にその命と向き合います。
なので私語は禁止。

「美味しい」など料理の感想も述べません。(美味しいという感想によって美味しくないものが生まれてしまう、平等に命を感じるため、という深〜い意味があります)

食事、食材に対して意識を向けるために食器の音もなるべく立てないように気をつけます。

今は人間が食物連鎖の頂点なわけですが、もし自分が“食べられる立場”であったとすると(リアル進撃の巨人)、スマホを見ながらとか、テレビを見ながらダラダラ喋りながら、自分は食べられたくないわけです。

なので食べる我々は真剣にその“命”と向き合います。

写真撮影だけは一応OKをいただいたのですが、このような趣旨の食事で写真を撮ることに意識が向いてしまうのも何だかちょっとナンセンスな気がしたので・・・、
今日はブログ用に一枚だけ失礼します・・・。(すみません)

↑これがかつて“禅僧”が召し上がっていたとされる食事。
今回も同じものを再現しています。

白いご飯、お汁、お新香などシンプルな内容です。
(「一汁三菜」の考えが好きな私にとっては好きな食事内容の一つですが)

「最も尊い貴重な」白いご飯を先に一口いただいてから、残りのお汁とお新香をまんべんなくいただいていきます。

本日は15名前後のみなさまとご一緒しましたが、
全員黙ったまま食事スタート。

静かなので若干緊張します。
でも「緊張する」ってよく考えたらおかしいのかも。普段いかに食事に向き合っていないか、なんだか自分を省みるきっかけになります。

「ぽりぽりぽり・・・」とお新香を噛む音が響いていきます。

喋れないので食べている間は当たり前ですが食べていることしか感じられません。

ご飯はもちもち。お汁はほっとする優しい味。

この味わいを、いつもより増して強く感じることができますが、食器の音も立てないように気をつけなければいけないので、やっぱり終始妙に緊張していました(汗)

それだけ普段「食べることに意識を集中できていない」ということなんだと思います。

食事中、食事後にもいろんなお作法があるよ

食事中にも様々なお作法があります。

<お茶碗のお米は数粒回収されます>

右端と真ん中のお椀の間にある、普段の食事では見かけない長細い筆のようなものは「刷」というお道具。

食べ終わった後に食器を清めるために使いますが、食べ始める前にこの先っぽに、右側のお椀にある白ご飯の米粒を数個載せておいて、“命が繁栄するため”畑に撒く用に食事中に回収されるんです。

これは「収飯」というお作法にあたり、今回も食事中実際に中尾先生が回収されていきました。

本日回収されたお米粒は、中尾先生の畑に本当に蒔いてくださるそうな。

<白いご飯の器には口をつけちゃダメです>

白いご飯の入った器には口をつけません(お米はとても尊い存在なので)

他の器の食事をいただく時は一度箸を置き、器を丁寧に持ってから食べます。
器を持って食べるのは日本だけだそうですが「この食事に向き合う」という仏教的な意味が込められています。

<食べ終わったら食器を丁寧に拭きます>

食べ終わったら、先ほどご紹介した「刷」を使い、お茶を食器に注いで食べた後の食器を丁寧にを拭いて風呂敷に包みます。

この食器を拭く所作にも「これで人生最後の食事やで〜」という意味が込められているので、その考えに則り一つ一つを丁寧に、今生の別れのように扱います。

↑こちらが本日の食事で使われた食器セットの全体図。
実際に昔の人が使っていたものと同じものを使わせていただきました。

一つ一つに置き方があり、またその所作についても意味が含まれます。

「丁寧に食事」をしてみた感想

そんなわけで、しーんとした静寂な空間の中食事をいただいてきました。

40年近く生きていきましたが、ここまでド真剣に食事に向き合ったのは今日が初めてです。

文章でお伝えするのはおろか(本当に愚かな行為だと思う)、私のこの文章力でお伝えするのは本当に難しいですが(汗)、

食事も一期一会であり、いつも「人生最後の食事」だと思ってご飯に向き合うこと、また現在の日本は平和でこのように親しい人と一緒に食事をすることのありがたさだけでもこのブログでお伝えできれば・・・と思い書いてみました。
少しでも伝わっていれば嬉しいのですが。

私も食べながら仕事をしたり、忙しい時はサンドウィッチを片手に・・・なんてことをしてしまい、ついインスタントの食事に頼ったりしてしまいますが(←体のためにもやめた方がいい)、自分の心を整えて仕事のパフォーマンスを上げるためにも日々の食事の時間を大切にしようと思う貴重な機会となりました。

そして、「日本の文化」ってすごいな・・・と本当にしみじみ感じた夜です。

現代に生きる私たちは毎回このようにド真剣に食べるわけにはいきませんが、今日このような食事をいただいた後、改めて「食事の意味」を垣間見て、そこに感謝すること、何を食べるにしても「命をいただくこと」を少しでも思い出すことの大切さを知るきっかけとなっただけでも有難いことです。

機会があれば大人の方も、お子さんにも本当に体験していただきたい「丁寧な食事の作法」。食事に対する考えが本当にアップデートされる良いきっかけになります!

それでは今日はこのへんで

\お読みいただきありがとうございます/

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