「今治タオル」から学ぶ“差別化”の話

私が以前勤務していた会社では、量販店で販売される下着や靴下のパッケージや店頭POPなどを日々制作していましたが、コンビニエンスストアで販売されているタオルのパッケージデザインも行なっていました。

私自身コンビニでタオルを買った経験はほぼありませんが、主に工事現場で勤務している人が、昼食や休憩時に、お弁当やコーヒー、ペットボトル飲料、タバコなどと一緒に買う人が必ず一定数いるので、意外と売れ筋の商品なんですね。

そんなわけで、依頼が途切れることもなくこれまで様々なタオルのパッケージデザインを過去に制作してきました。

・開封後すぐに水や汗を吸ってくれるタオル

・現場の方が頭に巻きやすい+10cmのタオル

・何の変哲もない白いタオル
(汚れがすぐわかる)

・ふわふわな触り心地のタオル

などなど・・・。

下着や靴下も同じですが、タオルなんて100円均一のお店にも売られている商品なので、当時ない頭をつかって「パッケージデザインで差別化するには・・・」みたいなことを考えていました。

今ではいい思い出です。

そんなタオルまみれの生活を送っていた矢先、
丁度私が勤務していた会社を退社しようかどうしようか迷っていた頃になって、一つの「タオルブランド」の名前を、度々耳にするようになりました

それは
今治タオル。

愛媛県今治市で作られている高級タオルです。

私がタオルのパッケージを毎日せっせと作っていた頃は、それほど有名でもなかったタオルブランドでした。

事実、2000年代初頭までは生産数の割にほとんど売上がなく、関係者には悲壮感しかなかったそうです。

ところが、2010年頃を境に
2枚で1万円のバスタオルが飛ぶように売れて、デパートや専門店でも取り扱われる全国的なブランドになっただけではなくヨーロッパうやアジアの市場へも参入するようになりました。

タオルに求める機能性は、何と言っても「水分を吸うこと」の1点に尽きます。強いてもう1点付け加えれば洗濯を繰り返しても硬くならない、ことくらいです。

この機能を満たしてくれるのであれば、100円均一のタオルでも十分に間に合います。
日常生活には欠かせませんが「正直どこのタオルでも良い」と感じている方も多いと思います。

ところが、
この今治タオルは機能性にプラスして、
他のことを武器に販路を拡大し
「高級タオルの代名詞」になりました。

まず今治タオルを語る上で欠かせないのは、
日本で一番有名であろうグラフィックデザイナー・アートディレクターの佐藤可士和さんによるブランディングデザインです。

佐藤可士和さんのことを本ブログで語るのは恐れ多すぎるので、気になる方は唯一神Googleで検索いただければと思いますが、現ユニクロのロゴマークをデザインし、柳井会長にそのプレゼンをたった3分で済まし採用させたのは有名な話です(ちなみにユニクロのロゴマークデザイン費用は2億円だそうです)。

佐藤可士和さんは、今治タオルの機能性を「ウールマーク」のようにクオリティを表示するようなシンボルをつけることを皮切りに、タオルの魅せ方を変え「JAPANブランド」として作り上げ、南青山に白いタオルしか並んでいない直営店を開店させました。

一つのブランドとして認知してもらうべく、
ロゴマークをはじめ様々なビジュアルを展開していったんですね。

もう一つは、
今治タオルの製造や生産地の背景をストーリー
として伝えたことです。

今治タオルのサイトにも書かれていますが、
・愛媛県今治市は120年間タオル製造の歴史があるということ
・今治市の気候と水源がタオルに最適な糸を作り出す
・伝統の技術を持つ
・吸水性の判断に独自の「5秒ルール」を設けている

など特徴を言語化することにより、
「今治タオルは日本を代表するくらいものすごく質のいいタオル」というのを少しづつ広めて、みなさんの感情に触れるように発信し続けていったんですね。

先ほどご紹介した、
佐藤可士和さんによるデザインと
元々今治タオルが積み上げてきたストーリーの発信
を掛け合わせることで

「もうあかん」と思われていた今治タオル工業組合は、日本だけではなく世界に認知されるような企業に成長を遂げていきました。

事実として、
今治タオルは昔からとても良い質のタオルでした。
元から「良い商品」だったんです。

佐藤可士和さんがブランディングを担当したから(多少の改良はあったとしても)劇的に商品が良くなったわけではありません。

「良い商品」なのに全く売れなかったんです。
だから、いかに「商品の魅せ方」を工夫するかが大切だということが、とてもよくわかります。

逆に、洗練されてかっこよくて良いロゴマークだけ作っても、肝心の商品がボロボロだったらそれも売れません。

「良い商品」と「良いデザイン」、
この二つを組み合わせることが売れることや、差別化の一つになるのでは、と思う今治タオルのお話でした。

佐藤可士和さんの本、とても面白いのでぜひ読んでみてください^_^

それでは今日はこのへんで

\お読みいただきありがとうございます/

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