売れなかった「世界最高峰の紅茶」を売る方法

私がかつて住んでいた兵庫県神戸市のすぐお隣に、西宮市という街があります。

プロ野球団・阪神タイガースの本拠地の阪神甲子園球場がある街ですが、この甲子園球場の近く、JR甲子園口駅の近くに世界最高峰の紅茶を飲めるティーサロンがあります。

その名は「ムレスナティーハウス」

紅茶大国のスリランカの中でも最高級の茶葉を使った紅茶・「ムレスナティー」と軽食を楽しめるサロンです。

「ムレスナティー」の味を語ったブログ記事や口コミは、ネットで検索すれば多数出てきますが、皆さん揃って「まさに世界最高峰の紅茶」と大絶賛しています。

そんなムレスナティーを日本で確固たる存在にした、株式会社ムレスナティージャパンの代表取締役、ディヴィッド・Kさんの著書を先日拝読しました。

「ムレスナティー 阪神間の小さな紅茶屋さんが起こした大きな奇跡」(マガジン社)です。

「良いものなのに売れない」悩みを解決してきた方法がギュッと詰まっている1冊なので、売れないものを売るためのヒントを見つけるためにはぜひお読みいただきたい1冊です。

ご紹介したムレスナティーは、スリランカにある「ムレスナ社」が販売していています。1983年の創業からわずか30年で世界のトップブランドの仲間入りを果たし、創業者のアンスレム・ペレラ氏は現在も「スリランカの紅茶王」と呼ばれています。

「ムレスナ社」は年間20万トン以上の茶葉を世界に輸出していますが、品質維持のため各国に1社のみにしか販売代理店を認めていません。

1980年代の当時、日本では無名だったムレスナティーを安く大量に買い叩こうとする商社とは違い、その味に惚れ込んだディヴィッド・Kさんの心意気を認めたアンスレム・ペレラ氏は、ディヴィットさんを日本唯一の輸入業社(インポーター)に認定し取引を開始します。

茶葉は間違いなく世界最高のクオリティ。
ムレスナティーは世界でも人気の紅茶でした。

ところが日本では全く売れませんでした。

90年代までは、紅茶のお作法に則り産地や特徴を語りながら、フレーバーティーではなく茶葉本来の味を楽しむことが絶対的な価値観。

フレーバーティーが中心のムレスナティーは日本では邪道扱いされ、なかなか受け入れてもらえなかったんですね。

そんな価値観を知らず、ムレスナ茶に惚れ込んだ当時のディヴィットさんは、「良い紅茶だから絶対売れる、お客様が押し寄せる」と信じて疑わなかったそうです。

本書では売れなかった苦しい過去が語られていますが、「良いものだから売れる」という考えの厳しさを痛感させられる文章が続きます。

販売開始から10年ほどは、東京や岡山への出張営業にかかった経費と売上がまったく同じだった日、出張先から帰る電車代の心配をした日もあったほど厳しい成績が続いたと言います。

ディビットさんは
そんな厳しい状況の中でも試行錯誤を繰り返しました。

お客様の視点に立ち、
「ムレスナティーが伝わる方法」を考えていったんですね。

日本人が好む味や香りを研究し、ムレスナティーを日本人向けにアレンジし独自の「ジャパンブランド」を作り、紅茶の魅力を伝えるために西宮市にティーサロンをオープンさせ、テイスティングができるようにし地道にムレスナ茶の良さを伝えていきます。

ブレンドしたフレーバーティーは、ディビッドさん自らがキャッチコピーを考え、デザインしたパッケージで販売します。

他のフレーバーティーには決して見られない、独特のコピーがくっついたパッケージデザイン。インターネットでは、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」っぽいポエムがあると話題になったことも。

笑えるコピーですが、ディビットさんは「この茶葉をブレンドしたストーリーを表現したい」と本書で語っています。

好きで好きでたまらなく、その道を極めた人が作り出すキャッチコピーやデザインは、本当に最強で、決して他の誰にも真似できませんし、何よりも人の心に突き刺さるものができあがると、このパッケージを見て本当にそう思います。

「紅茶の淹れ方に堅苦しい作法はありません。ポイントはフレッシュで美味しい茶葉をたっぷりと使うことです」と本書で語るディビッドさん。

作法にとらわれず気軽に美味しい紅茶を飲める、と説いたこともファンを増やした一つの要因なのではないかなと思います。

こうして、ムレスナティーは日本でもゆっくりとファンを増やし続け、西宮市のサロンには全国からお客様が来店する店舗になっていきました。
西宮のサロンには、今でもディヴィッドさん自らが店頭に立ち、来店したお客様に紅茶を入れています。

「良い商品だから売れない」を」解決するには、
・お客様の立場に立って商品を考えること
・伝える場所を整えること
の二つが重要ということに、改めて気づかされます。

そして、この二つを考えることが
美しいパッケージデザインを作る前に、斬新なロゴマークを作る前に、本当に必要な作業なんですね。

本書の最後で
「モノが良いからこそ勘違いするんです」
という言葉を残しているディヴィッドさん。

クリエイティブな作業に移る前に、いつも思い出したい一文だと感じました。

次回神戸に行った時は、ぜひ西宮のティーサロンにも立ち寄ろうと思います^_^

それでは今日はこのへんで

\お読みいただきありがとうございます/

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