デザイナーという職業

売れないないものをどう売るか

今から15年前の2003年、
私はとある縁から大手量販店の販促物や下着や靴下のパッケージを制作する会社に就職した。

多くのクリエイター1年生が身にしみて感じたことだと思うが、
「モノを作る」厳しさというのを身を持って知ったのである。

しかも、制作するものは量販店の販促物や下着のパッケージ、ラベルなどである。
学生時代に抱いていた「CDジャケットをデザインしたい」という世界とはかけ離れた仕事内容であった。
また時々会う学生時代の同期が就職した「華やかな広告」を作る会社の話を聞いて、
「自分の仕事などたいしたことない」と思うことも少なくなかった。

会社を辞めて、新しい就職先を探せばよかったのかもしれない。
しかし、勤めて3ヶ月経った頃には仕事に没頭するようになった。

「どうやったら店で売れるのか?」
それを常に考えるようになった。

何の変哲もない、白い肌着、靴下。
他の店にもごまんと溢れている女性用の下着。

これを店頭でお客様の手にとってもらうためには、
どういうデザインで、どういう文章が効果的なのか。

会社にいる間はもちろん、休みの日も考えるようになった。
会社にいる間は与えられた制作をしなければならない、
なので休みの日になると、近所のドラッグストアーやスーパーに出かけ
パッケージや販促物を見て、こっそり携帯電話で撮影し写真に収めたりしていた。

自分の制作した販促物が採用され、店頭に並んだ際には、
店まで見に行ったり、嬉しさのあまり自分で購入したこともあった。

このように、最後には捨てられてしまう商品のパッケージや
店頭で0.3秒しか見てもらえない販促物を11年間作り続けた。

売れなければ意味がない

華やかな広告や、賞を取る広告は作ることができなかった。

しかし、私は会社員でデザイナーをしていた頃に気づいた大切なことを
今でも大切にしながらデザインを作っているのである。

それは、
「デザインで売れなければ意味がない」ということだ。

世の中にはモノが溢れている。
キレイでかっこいい広告やデザインはもちろん大切である。
しかし、それだけで全てのモノが売れて、
企業の売上が伸びるという結果に繋がるというのは違うと心から思うのである。

もし私が学生の時に抱いた「CDジャケットを作るデザイナー」になっていたら、
おそらく、コピーライティングやマーケティング思考に出会うことなかったであろう。

デザインが美しいのはもちろん大切だ。
しかし美しいだけでは、多く存在している個人事業や中小企業の売上を
伸ばすことができない。

2014年に退社して独立した時から、私が何よりも大切にしている信念である。