地域の魅力をアピールするデザインの話

柏市に住んで4年、初めて「カシワニ」のお菓子を見つけた

先日、お世話になった人へお菓子でも送ろかと思い、柏駅前の高島屋の地下に行った時の話。
そこで、わが町柏のゆるキャラ「おいでよ!カシワニ」のお菓子コーナーを見つけました。

おおっ、カシワニ!お菓子になっとるんかー!!
ギフトとは別に、自宅用としてクッキーと焼き菓子を数個買って帰り、家でいただきました。
柏市に4店舗ある有名お菓子屋さん、西洋菓子処樹杏さんが作っているこのお菓子たち、シンプルな素材でほどよい甘さ、よくあるお土産の焼き菓子とは違う、手土産にもぴったりと感じる、とても美味しい味でした。

ですが、ふと思ったのです。
「これ、柏駅の改札前で良く物販やってるスペースで売っていればもっとええのにな」と。

いや、待て・・・。「おいでよ!カシワニ」である。
柏に住んでいる人に向かって「おいでよ!」と言われても「もう住んでますが何か?」となってしまうので、例えば、JR上野駅の中央改札なんかで売ることにより「おいでよ!カシワニ」のコピーも生きてくるのではなかろうか・・・常磐線快速なら柏にびゅーん!と30分!疲れたあなたにはゆったり快適グリーン車をおすすめします!なんてどうやろう・・・
と、食べながらゆるーく考えておりました。

私は柏に住み初めて4年。カシワニの存在は知っていましたが、お菓子の存在は知らなかった。・・・という非柏市民と罵詈雑言を浴びせられ、樹杏さんにも怒られるかもしれませんが、ごめんなさい、本当に知らなかったのです。だって、目立つところに売ってないよ、とここで言い訳もしてみます。

どんなにいいものでも、アピールしないと知ってもらえないと常日頃から思っている私は、やっぱり今回もそう思ってしまったのです。

アピールしなきゃパスは来ない

少し話は逸れてしまいますが、ここでマライアキャリーの有名な話を書きたいと思います。

マライアキャリーはご存知の通り、世界で最も有名なシンガーのひとり。その彼女はデビュー前にアピールするチャンスをいつもうかがっていたという話です。

マライアキャリーはデビュー前、いつも自分の歌が入ったデモテープを持ち歩いていました。たまたま参加したパーティの会場で会ったソニーミュージックの会長、トミー・モトーラー氏にそのデモテープを渡しました。
ソニーミュージックの会長でしたら、もしかしたらこのようなデモテープはたくさんもらっていたかもしれないし、聞かないテープだってあったかもしれない。しかし彼は帰りの車の中で、そのテープを再生しました。その歌声を聴いた彼は、急いで車を引き返しマライアキャリーに契約を約束した、という伝説です。

マライアほどの歌声の持ち主であっても、ただ待っているだけではなく常にアピールするチャンスをうかがっていたということです。

マライアからカシワニに話を戻します。

カシワニのお菓子は本当に美味しかった、だからもっとたくさんの人に知ってほしいと思いますし、もっといろんなところで焼き菓子をみなさんに味わってほしい・・・。アピールすることでたくさんの方に知ってもらえたら、ぺーぺー柏市民として大変嬉しく思います。

地方の事業や名物をアピールする広告たち

我が家の本棚に並んでいるデザイン参考書の中に、「地域の魅力をPRするデザイン まちアド」(発売元:パイ・インターナショナル)という本があります。この本は地域に人を呼び寄せる広告・宣伝ツールを特集した本なのですが、大掛かりな観光キャンペーンから、市町村のIターン・Uターン促進パンフレット、地元の商店街が作ったお買い物ガイド、温泉街のマップまで、規模の大小に関わらず地域の魅力をPRする優れたアイデアとデザインが掲載されており、パラパラと見るだけでも楽しく、たまに引っ張り出してパラパラと眺めています。

ここに掲載されている地域PRは、かなり面白い。
例えばSNS受けを狙った、香川県の高松琴平電気鉄道の広告。


乗車切符と仏生山温泉の入浴料、タオルがセットになったことを乗車券の販売告知PRの販促物。「電車と温泉をつなぐわかりやすいイメージでインパクトのあるもの」のコンセプトで作成されたそうですが、その狙い通りSNSで話題をさらったそうです。

続いては、広島県のこちら。

入手希望者の行列が発生したという広島県のガイドブック。
「広島究極のガイドブック」と題して、県の魅力を伝えるフリーマガジンですが、これは何と全国の商業施設・カフェ・美容室・コンビニ・都内のアンテナショップなど、中国地方のみならず、全国に配布し、しかも配布開始後たちまち品切れ、即増刷という恐ろしいガイドブックです。

広島はプロ野球チームでも有名ですが、そのアピール力の凄まじさを、広島市、いや広島県に行くと感じることができます。駅前のお土産コーナーにあるあふれんばかりのカープ坊や。というか店が全体的に赤い。お菓子やグッズの種類も多彩です。若い女性に向けた小物もたくさん。
もし広島県が「ええんじゃ、わしらだけで応援しておけば」と思っていたら、「カープ女子」なんて言葉も生まれなかったと思います。

ちなみに私は小学生の頃、たった3年ですが広島市内に住んでいました。広島は素敵なところ。今すぐ訪れたいと思う場所の一つです。

大阪のひらかたパークの広告が、やばい

アピールし続けること、SNSで話題をさらうこと、それを続けていけば小さい街も小さい商業施設でも全国的に有名になることは十分可能だとつくづく感じたのは、大阪府枚方市にある「ひらかたパーク」の広告戦略とその話題性です。今更書く必要もないかもしれませんが、ひらかたパークの広告は、我々の想像の常に斜め上を行っています。

参考 超ひらパー兄さんのポスターが見るたびにおもしろいNAVERまとめ

私は関西の生まれなので、子供の頃からひらかたパークはよく聞く馴染みの遊園地でした。
ひらかたパークは現在営業している遊園地の中でも最も古い方と言われており、入場者が一番多かったのは1974年の約160万人だそうですが、ユニバーサルスタジオジャパンの登場で、2011年には年間来場者数は約90万人にまで落ち込み苦しい経営が続きました。
そこで登場したのが、「ひらパー兄さん」です。初代はブラックマヨネーズの小杉さん、二代目はV6の岡田さんがひらパー兄さんに就任しています。

ナンバー1のUSJとは全く違う広告戦略をとったというのは有名な話で、今やビジネスのV字回復の例として、様々なメディアで紹介されています。
そしてテレビCMだけではなく、SNSでその広告が話題になるというのはこれ以上にない認知度UPにつながります。

事実、我が家の夫は「大阪に行ったらユニバーサルスタジオじゃなくて、ひらパーに行ってみたい」と言い出しています。

東京都生まれ千葉県在住、まったく関西に関係ない人に関西のローカル遊園地に行ってみたいと言わせた“ひらパー”の戦略を私は素晴らしいと思いますし、「ナンバー1に勝てない時の戦略法」は私たちのようなフリーランスが常日頃から考えておくべき戦略の一つだと思わざるをえません。ナンバー1の売りとは別の切り口で、地元愛と独自の属性をアピールし続けた戦略は、人の心を掴むことができるんだな、と感じています。

アピールすることの大切さ

面白い戦略を立てても、それをアピールしなければ何の意味もありません。
軸となるコンセプトがしっかりしているのはもちろんですが、SNSで話題になることも今の時代、大切な要素の一つなのではないか、とつくづく感じる今日この頃です。

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