誰でにもできるからこそ正しい知識を持って仕事する

「印刷・紙の時代は終わり」なんて言われて随分久しくなりました。

私がグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートさせたのは2003年。その頃はAppleからMacintoshのG3、そしてG4が発売されており、デザインから印刷物の入稿作業は全てMacで行なっていました。

昔は写真の加工も文字の入力も、今と比べると大変な重労働。ですがMacの登場でそれが容易にできるようになりました。

でも私はデザイナーとして勤務し始めた会社で、時には印刷や加工工場の現場を見せてもらったり、印刷技術の仕組みを一から徹底的に学びました。
学びました、と書きましたが正確には「知らないと仕事できない」状態だったので必要不可欠な知識だったんですね。

今や、プロでなくとも印刷物をメール1通で注文できて、印刷物は衰退の時代なんて言われるようになりました。
この時代に、印刷の技術は必要ないんじゃないかと思われるかもしれませんが、私はプロのデザイナーなのであれば印刷技術は必ず知っておく必要があると思っています。

「誰でも印刷物が作れる」時代だからこそ、技術を知っている人と知らない人の間には仕上がりに大きな差ができます。誰が作っても同じクオリティでできるわけではないんですね。

例えば、
印刷物を注文する際、データは全て「CMYK」モードで作成し、写真も全てCMYKに変換して配置しておく必要があります。
これは本当に基本中の基本なのですが、WEB上で扱われる写真データは全て「RGB」モードというモニターでの表示に適したカラーモードになっています。WEBと同じRGBモードで印刷物を注文すると、エラーになってデータを受け付けてもらうことができなかったりします。
また最近では、印刷業者側で自動変換してくれる場合も多いですが、想像していた色と全く違う仕上がりで納品されるなど、トラブルの元になります。

このCMYKの話は、本当に基本のルールなので知らないデザイナーさんはいないと思いますが、このように「簡単」にできる印刷にも、無数のルールや専門用語が存在しています。

もし仕上がりが悪かった際に「印刷のクオリティが低くて自分は悪くない」と思わないためにも、衰退していくだろうと言われている業態でも、それを仕事にするのであれば最低限のルールを知っておくことは必要です。

そういえば少し前引き受けた仕事の依頼に、サプリメントのボトルに巻くラベルのデザインがありました。

このサプリメントに巻くラベル、
買う側から見ると「ただフィルムに印刷がしてあるだけ」に見えますが、実はこの「フィルムに印刷をする」という技術、制作するデザイナー側には2つの工程が必要です。

まず一つ目は、ラベルのデザインそのものです。
このデザインにも、原材料の表示やバーコードの表示の確認、どの媒体でも同じですが食品パッケージの誤植は絶対に地球が沈没してもあってはならないので、本来のデザイン以上に要注意するポイントがたくさんあります。
加えて日本で販売される商品のパッケージには、リサイクルマークの表示が義務付けられています。このリサイクルマークも最低限必要な大きさと素材の表示など、知っておかなければいけないことがあります。

そして二つ目は、フィルムの裏側に印刷する「白版」(しろはん)の制作です。
フィルム自体に印刷をすることは可能ですが、その印刷が透けないようにするために、フィルム印刷時には必ずこの白版のデータを用意する必要があります。


Everything You Need / Shutterstock.com

ペットボトル飲料のラベルも剥がしてみると、必ずこの白版が印刷されています。

この白版、印刷時に不具合が出ないように0.1ミリ単位で幅を調整したり、時にはここはわざと透けさせて表現する、ここは二重刷りにして絶対に透けないようにする、などデザインを生かすことも殺すこともできる部分。

今日は一例を書きましたが、これ以外にも様々な印刷技術が存在します。
箱の印刷や、型抜き(トムソン型)印刷など、

誰にでもできる印刷注文の時代になったからこそ、この印刷技術を正しく理解し、どんな時にも間違いなく正確に素早く制作すること。
「デジタルだから誰が作っても同じ」ではなく、必ず知っていると知らないの差は確実に印刷に現れます。

たまにいるのは、お客様で
「あ、印刷はこっちで手配するので大丈夫でーす!」と言う方がいますが、そんな方に限って両面印刷のこともご存知なかったり、パンフレットに折り目をつける方法がわからなくて困ったりして後から慌てて連絡をくださる方がいらっしゃいます。

そんな時は印刷まで頼っていただくか、遠慮なしに事前にお尋ねいただけるとトラブルを回避できてより早く仕上がりがお届けできます^_^

そして、紙は仕事も業界自体も衰退していく媒体ですが、決してゼロにはならないとも思っています。プロのデザイナーであれば紙のことも知っておいて決して損ではないと思いますし、極めればもしかすると今後逆に貴重な存在になるかもしれません・・・と希望を持ったりしている今日この頃です。

それでは今日はこのへんで

\お読みいただきありがとうございます/

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