先日からディレクター・ビジネスデザイナーの佐々木康裕さんの初の著書、“D2C「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略”を読み進めています。
著者の佐々木康裕さんは、Takramでディレクター・ビジネスデザイナーを務める一方、様々なビジネスメディアで執筆をご担当されたり、セミナーでご登壇されたりマルチでご活躍されていらっしゃいます。
昨年からはニュースレター(メールマガジン)「Lobsterr」の編集・発行にも携わっておられますが、私が佐々木康裕さんを存じ上げたのは、このニュースレターがきっかけ。
毎週月曜日の朝、私のGメールアドレスに送信されてくるそのニュースレターには、主に世界中のデザイン、アート、ファッション、フード、ビジネス事情、トレンドなど、様々なことが独特の視点で切り取られており、本当に楽しく拝読しており、自分の視野が広がります。
ニュースレター自体はとても長く、特に写真もイラストも挟まっておらず文章ぎっしりの内容ですが、ゆっくりとその長い文章をコーヒーを飲みながら読むことは、私の月曜日の朝のささやかな楽しみになっており、メールマガジンなのに文章を読むことに「没入」させてくれる読み応えのあるニュースレターです。
皮肉や批判よりも、
分析と考察を。ファストフードのようなニュースではなく、
心と頭の栄養となるようなインサイトを。
と、ニュースレターのコンセプトを掲げられていますが、本当に読み応えのある内容なので、視点を広げたいみなさまにぜひぜひお読みいただきたいです^_^
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Lobsterr Magazine
そんな、佐々木康裕さんの書著、“D2C「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略”。
今、最も勢いを拡大している「DtoC」スタイルの業態を、成功している事例などを交えながら詳しく紹介している1冊です。
「DtoC」(D2Cとも表記されます)とは、「Direct-to-Cunsumer」の頭文字を取った略語。自社企画の商品を、直接消費者へ直販するビジネスモデルのことです。
新しい消費の価値を持つミレニアル世代(1981年から1996年の間に生まれた人々のこと)をターゲットにしたビジネスモデルで、SNSなどのインターネットと、リアル店舗での対話を大切にし、商品やサービスを購入してくれる人を「お客様」ではなく「コミュニティの仲間」と位置付けています。
製品自体は比較的安価で、買い求めやすい価格の商品・サービスを提供していることが特徴です。
そういえば、先日東京の原宿に日本初出店された、ニュージーランド生まれのシューズブランド「Allbirds」も「DtoC」ブランド。
大きな注目を集めています。
この「DtoC」業態のブランドがアメリカでは勢いを増しており、伝統的なブランドを廃業に追い込み、グッチやプラダなどのハイブランドが並ぶニューヨークのソーホー地区にお店を構えています。(多分家賃めっちゃ高いはず)
しかも勢いを増しているブランドが扱っている商品は、マットレスやメガネ、スーツケース、ED用サプリなど特に目新しいとも感じず、従来は決して愛着を持って使うようなモノではない商品ばかりです。
本書では、今アメリカで注目されているDtoCブランドの特徴と、以前から存在している伝統的なブランドを比較しながらその実態を解説していますが、
私が印象に残っているのは、
「モノを売ろうとせず、世界観を発信している」
「ブランドのストーリーを語っている」
この2つの特徴です。
例えば、
1986年に創業したアメリカの寝具マットレス最大手の「Mattress Firm」(マットレスファーム)を2018年に破産法を適用する引き金となった、D2CブランドのCasper(キャスパー)。
rblfmr / Shutterstock.com
2014年の創業以降、驚くほどの速さで成長し2019年にはユニコーン企業(評価額が1,000億円を超えるベンチャー企業)の仲間入りをしたこの会社は、同じくマットレスを販売していますが、従来のマットレス会社と大きく違うのは「マットレスを売ろうとせず、ライフスタイルの提案をしている」という点です。
ニューヨークのソーホー地区にある店舗には、ベッドルームを再現した美しいブースがいくつもあり、事前に予約し25ドルを支払えば45分間お昼寝することも可能。
またCasperが発行している雑誌には、自社のマットレス商品には一切触れずに、ヨガやウェルネス、睡眠、健康などのクオリティの高いテーマとグラフィック、写真が掲載されています。
マットレスだけを売ろうとせずに「睡眠」を中心としたライフスタイル自体を売り物にしているということがよくわかります。
もう一つは、スーツケースを扱うAway。
こちらも2015年創業から2018年には約150億円を売り上げる注目のDtoCブランドです。
スマホを充電できるというめっさ便利なスーツケースで私も今欲しい1つ^_^
画像引用元:https://www.awaytravel.com/
この会社も自社の雑誌を発行していますが、自社のスーツケースを売るための内容は一切なく、旅の美しい写真や、旅にまつわるコラムなどが掲載されている非常にクオリティの高い1冊。
先ほどのCasperと同じく、「旅」を売る会社と自らを位置づけて、「旅のある生活」という世界観・ストーリーを届けているんですね。
この2社が成功した理由は、もちろん「世界観」の切り取り方が優れていただけではありません。顧客のデータを集めて当然テクノロジーを駆使した様々な線戦略を行なっています。
しかし、従来のブランドのように
「モノ」を売るだけではなく、
「世界観」を売る
発想は最新のテクノロジーやA.Iに関係なく、その重要性に気付くことのできる一種の能力のような気がします。
本書には、このようにアメリカのDtoCブランドの例が多数紹介されています。
日本にはまだこのようなブランドは少ないように見えますが、今後確実に増えてきます。
「ニューヨークには、金融で成功した成金と貧乏人と観光客しかいない。アーティストはみんないなくなった。ニューヨークに来る価値なんかないよ」と以前にツイッターのつぶやきで見かけましたが、やっぱり「日本の5年先を行く」と言われているニューヨークには本当に近々訪れたいと思っています。
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